風力発電の最前線で20数年前に思い描いた未来
風力発電の灯を守れ!
黎明期を支え続けたメンバーたちの思い
温室効果ガスの排出量削減を目指す「京都議定書」が採択された1997年に、コスモエコパワー株式会社は誕生した。
2021年に策定された第6次エネルギー基本計画では、再エネ主力電源化の切り札と位置付けられた洋上風力など、風力発電が大きな転換期を迎えた現在、その普及を黎明期から取り組んできたメンバーたちはどんな思いを抱いているのか。
眞鍋修一専務取締役(以下、眞鍋)、橋川さゆり取締役(以下、橋川)に、創業からの歩み、そして、今後の展望について語ってもらった。
風力発電の黎明期
記者:まずはこれまでの風力発電との関わりについてお聞かせください。
眞鍋:私たちが創業した1997年に、京都で地球温暖化防止京都会議(COP3)が開催されました。日本でも温室効果ガス排出量の削減が気候変動対策に不可欠であるという認識が高まってきました。また、デンマークを中心とした欧州各国では風力発電の普及拡大が始まっていましたが、日本の国土、気象条件には、風力発電は向かないと評価されていました。しかしながら、現地調査により日本においても風力発電に適した風況の適地も確認できていましたので、日本のエネルギー構造の転換に風力発電は寄与できるという強い思いから、コスモエコパワーは設立されました。
橋川:気候変動などを防ぐためには、今でいう「エネルギーシフト」のような変革が必要という議論は当時もありました。しかし、エネルギー事業においては、安定的に供給できる仕組みがあることが最重要とされ、天候などに大きく左右される風力発電が、説得力のある受け皿として検討されることはほとんどありませんでしたね。
眞鍋:ビジネスである以上は赤字を続ける訳にはいかないので、適地調査や技術開発を進める一方、経費や人件費を最適化するために効率的な組織づくりに苦心したり、投資事業を慎重に選定したりと、当時、利益を継続的に出すためにあらゆる手を尽くしました。新規の発電所の立ち上げ計画が途中で止まるなど、厳しい状況が続くなかで、少しでも事業を継続できるよう工夫を重ねてきました。
新しい産業なのでできた様々な経験
記者:これまでの取り組みを振り返って、とくに印象に残っていることは何ですか?
眞鍋:とくに発足当初は風力発電に関して、私たちのような事業会社は他にはほとんどありませんでしたので、分からないことが多く、また予想外のことが発生したり、試行錯誤する日々が続きました。風力発電を設置する用地探索からその後の運営まで手がける幅広い事業のなか、有用なアイデアがあれば積極的に取り入れていきました。例えば、風車への落雷の影響を防ぐ避雷針は、私たちがメーカーにお願いして初めて導入し、今では業界のスタンダードとなっています。
橋川:私が印象深いのは、環境影響評価法の対象事業となったことを受けて移行措置をはじめ法制度整備に携わらせていただいたことですね。長年、風力発電事業に携わってきた者として、業界を代表する立場で様々な検討会などにも参加し、省庁の担当者や政治家の先生方とも意見交換、協議させていただくなど、通常では考えられないような経験をさせていただきました。条件を整えることで、自分たちの事業を取り巻く状況を変えたいという思いもありましたが、より良い制度をつくることにわずかながらでも貢献することができたのは嬉しかったですね。
迎えた転換点。新たに生まれくる課題は「信頼」でクリア
記者:これまでの歩みのなかで大きな転換点だったと感じるのはいつでしたか?
橋川:2011年3月に発生した東日本大震災、そして福島第一原発の事故は、それまでの風向きを一変させました。それをきっかけに、原子力から再生可能エネルギーへと政策も変わり、電力の固定価格買取制度FIT法がスタートしたことは、風力発電の歴史においても、最も大きな転換点といえるでしょう。
記者:課題には、どのように向き合ってこられたのですか。
橋川:真摯な説明や意見交換など、当たり前のことを丁寧に積み重ねることを大切にしました。風力発電の歴史は浅いので、結論ありきで相手を説得しようとするのではなく、様々な意見の方と一緒に調べ、考え、答えを導きだす必要がありました。例えば、風車の設置が周辺の環境や生態系にどのような影響があるのかについては、こちらから環境団体の方に働きかけて一緒に調査を行いながら事実を確認していきました。
眞鍋:様々なステークホルダーの方々と真摯に話し合い、議論してきたことは、今でも当社の大切な財産になっています。
今、注目の「洋上風力発電」。その未来をつくる人材を育てたい
記者:現在、洋上風力発電に国や経済界から大きな期待が寄せられています。それに対し、どのような思いをお持ちですか。
眞鍋:洋上風力は、地域の産業振興に寄与し、漁業振興の可能性も秘めており、重要な産業になっていくと確信しております。普及拡大にあたり、陸上の風力発電とは異なる技術も必要としますが、私たちが培ってきた経験やノウハウのなかには、洋上風力発電でもそのまま活かせるスキル、技術もたくさんあります。これまで以上に多くの事業者が参入した激しい競争になっていますが、この分野でもリーディングカンパニーと呼ばれる存在になりたいと思っています。
橋川:眞鍋が話したように、地上の風力発電とは異なる部分もありますが、洋上風力発電には、かつて私たちが直面してきたような、手探りで向き合っていく必要のある課題が山積しています。オンリーワンの存在として、道のないところに道をつくってきた私たちの経験を、これからを担う若い人材にもしっかりと継承しながら、洋上風力発電の可能性を大きく育てることに貢献したいですね。
眞鍋:培ってきた技術やノウハウだけではなく、根気よく仕事に向き合っていく姿勢が当社の持ち味だと思っております。そのマインドも引き継いで、着実に仕事を進めていくことが未来を切り開いていくと思います。
橋川:未知の領域を開拓できるのは、好奇心と探究心、そして良心を持って仕事に向き合うことができる人材です。これからの風力発電の歴史を築いていく意欲のある若い方々とともに、サステナブルな社会の実現をさらに強力に牽引できる組織をつくっていきたいです。
記者:ありがとうございました。