陸上風力事業への取組み
陸上風力発電について
開発計画の流れ
風況、土地の利用条件、周辺環境等から風力発電事業の実現可能性のある地点を机上検討により抽出し、現地調査を行います。
現地調査の結果、事業の実現可能性のある地点において風況観測等調査を実施します。
現地の風況条件を確認するとともに、風車配置、電力会社との系統連携、許認可環境影響などの各種調査・検討を行い、最適な事業計画の策定を行います。
当社の取組みについて
2020年10月に当時の政権から「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが宣言され、風力発電を取り巻く環境は大きく変わってきました。国は再生可能エネルギーの最大限の導入を長期目標に掲げています。
そのような環境の中、当社は、これまで創業以来風力発電の専門企業として先導的に取り組んでまいりました。
更なる地球環境の将来に向けて、培ったノウハウを存分に活用し、地域社会の皆さまとの共存共栄を図りながら、地域に根差した陸上風力発電事業を推進してまいります。
風力発電の計画段階
地域の皆さまと共に創る、未来へのバトン
堀 亜佑美 事業開発部(取材当時)
新卒で入社し、3年目となる現在は、北海道でのプロジェクトに携わっています。風況調査、説明会、役場対応、地権者確認など初期の地元調整全般を担い、配慮書や方法書という環境影響評価手続きを終えたところです。
必要な手順を確認して書類を揃えたり、関係企業と打ち合わせたり、現地の方々とのアポイントを取ったりして、多い時は週の半分は現地に足を運びます。地元訪問の際は、現地事務所の所員と2人体制で行くことが多いです。契約関係や事業の進捗状況のご説明といった真面目な話を真面目にするだけではなく、雰囲気を和らげるような雑談も大事にしています。「仕事で来ています」という意識ではなく、自然体で臨むことを心がけています。
風力発電事業は、立地計画策定から着工に至るまでのスパンが非常に長いことが特徴で、中には10年近くかかることもあります。担当するプロジェクトの段階に応じて、経験できることも変わってきます。開発担当者に求められる知識は広範にわたりますが、まずは自分が経験したことを知識としてしっかりと後輩に伝えられるようになりたいです。大きな目標では、将来、「これは地域の皆さまと一緒に建てた風車だ」と言えるような、形に残る仕事がしたいという思いです。
堀さんの上司に当る小暮武勇さんからのメッセージ
タイムスパンが長く、地域毎の特色も出やすい風力発電事業においては、1人ですべてを担当するというより、この段階ならあの人、この手順ならあの人が詳しいというような、集団知の積み重ねが重要になってきます。3年目ながら着実に経験を積んでいる堀さんは、すでに人から頼られるだけの知識を持っています。近い将来、後輩たちのサポートをしながら、持ち前の丁寧なコミュニケーションで地域からも信頼される存在として、事業開発の中心的存在になってほしいと思います。
風車の建設段階
エンジニアリング部は陸上風力発電所の新規開発案件と既設サイトのリプレース(更新)案件にあたり、事業開発部、O&M部、経営企画部と連携して、主として運転開始までの技術的側面を担っている部門となります。
調査グループ・設計グループ・建設グループの3つのグループから構成された組織で、立地調査・基本設計・詳細設計・建設工事に分類された業務を、各グループがリレー形式で担当し、陸上風力発電所の商業運転開始に向けて邁進します。
それではこれより各グループの業務を詳しくご紹介します。
調査グループ
調査グループの主たる業務は 、陸上風力発電所計画の基本的な成立要件に関する調査・検討・設計です。具体的には風況観測・風況解析を行い候補風車機種の絞り込みや風車配置の検討、発電量試算等を行います。また、電力系統枠の確保や、年々大型化する風車部材のサイトまでの輸送可否の調査・検討等多岐にわたり、未開の地を切り開く醍醐味が味わえます。
設計グループ
設計グループの主たる業務は、調査グループの業務を通して蓋然性が高まったプロジェクトを対象に建設を前提とした詳細設計業務です。また着工に必要となる法令の要求に基づいた各種許認可・届出等に関する技術面での対応も行います。海外の風車メーカーとの協議では経験と知識、そしてなにより忍耐力と交渉力が試されます。
建設グループ
建設グループの主たる業務は、確実な工事管理により、所期の仕様・品質・予算・工程で完工へ導く業務です。また使用前自主検査、安全管理審査等の法令で定められた検査業務に携わることができます。
陸上風力発電所建設の変化を間近で体感でき、完成に至った時の達成感は格別です。
風車の運用段階
風力発電所を安全に効率よく稼動させるために、24時間の遠隔監視、定期的な点検、故障やトラブル時の対応を行います。
コスモエコパワーでは青森県にある運転管理センターで全国にある風車の稼働状況を24時間監視しており、トラブル発生に備えています。トラブルがあった際には速やかに対応を行います。
全国にある風車を管理する管理事務所では、保全員が常駐し日々風車のメンテナンスを行っています。
メンテナンスは所定の点検を基本とし、トラブル対応、大型部品の修理、ブレード補修などを行っています。
運用から撤去まで
操業運転を開始し、安全に操業運転を継続するには風力発電設備のメンテナンスは欠かせません。
通常点検業務には、毎月実施する月例点検や半年周期と1年周期の定期点検業務があります。
通常点検業務から設備に対して不具合が発生していないかを目視点検・触診点検・工具を用いての点検作業で風車の安全確認を実施しています。
通常点検業務の他には、大型重機などを使用した増速機・発電機交換作業、ブレード補修業務なども実施し安全操業運転に努めています。
当社では、これらの経験を活かし商業運転停止後の解体作業まで一括管理をしています。
ロープアクセス技術
当社では、ブレード・タワーの点検ならびに補修を行う手段として、高所作業車、可搬型ゴンドラ、またはロープアクセスの3つから作業内容に最も適した方法を検討し実行しています。
比較的軽微な点検ならびに補修作業においては、準備時間を短縮できるロープアクセス工法を用いています。
ブレードサービスの経験豊富なスタッフが自らロープアクセス技能を習得することで、点検補修の技能と高所作業の機動力を融合させ効率の良いサービスを展開することが可能になりました。
ロープ切断リスクを回避するため、難切断性が高い布製ロープガードを用いていましたが、金属製ワイヤーを身体保持器具へ組み込むことで、ヒューマンエラーにより切削工具が触れてしまうような場面でもより安心して作業ができる環境づくりに力をいれています。
近年大型化が進んでいる機体に対しても、10m超えの横移動ならびにその地点での姿勢維持が単独で可能な工法を開発し、適用できる機体を増やすことにより安全で正確な補修ならびに点検作業を実施しています。
海外からの部品の直接調達
大型風車は主に欧州製のため、修繕に使用するスペアパーツの多くも欧州製です。当社ではこれらの部品を直接欧州のメーカーやサプライヤーから調達しています。
部品のほか、コンポーネントメーカーやサービスサプライヤーなどから直接技術支援・要員教育を受けており、欧州を中心としたサプライチェーンとの多くの取引実績を有しています。
また、定期的に開催される海外の風力発電展示会を訪問し、取引先との関係の維持や新たな供給先の開拓、最新の業界動向の把握に努めています。
新人育成トレーニング
右側の写真が実際の風車を改修したトレーニング機になります。トレーニング機になる前は1998年12月から2020年7月までの21年8か月の間、安全稼働で電力を供給していました(写真左側)。
その後3カ月の改修期間を経て、2020年10月にトレーニング機として新たに生まれ変わりました。
現在は新入社員育成向けに、風車に関する基礎知識を学ぶ場として活躍しています。
今流行りの大型風車ではありませんが、構造がシンプルなため基礎的な構造を理解するにはとても良い教材となっています。
当機の他にブレードメンテナンスやロープワークをトレーニングできる施設を開設しました。
O&M業務の受託
日本初の風力発電専門企業として培った経験や知識をベースに、長きにわたりお客様が所有する様々なメーカーの風力発電機のオペレーション&メンテナンス(O&M)をサポートしてきました。
メンテナンスにあたってはメーカー独自に推奨する点検項目のみならず、電気事業法等で定められた基準に適合している検査、定期安全管理審査内容を満たす点検を行います。
風車は厳しい気象条件下に設置される場合が多く、予防保全や日々のオペレーションが重要となりますが、各地に専門的な知識を持った作業員を配置し、不具合が発生した際などは迅速に対応します。
ブレード点検および修理、増速機や発電機の交換など大型重機を使用した作業実績も豊富に持っており、発電所の撤去工事も行います。
東京大学とのAI解析についての共同研究
東京大学とのブレード撮影画像のAI解析についての共同研究
ドローンを使った風車ブレードの撮影をする技術においては、自動化も含めて世界で進んでいます。
撮影した画像は1本のブレードで50枚~100枚程度になり、人がこの画像を全て解析していくと時間がかかり、人による解析では解析の精度と損傷による判断基準の安定性に課題が残ります。
そこで、自社でブレード補修も含めてメンテナンスを実施してきた知識および経験を活かし、それらをデータとして活用したAI学習エンジンを備えた損傷検知性能を有する風車ブレード画像診断を可能とするAIシステムの構築に取り組むことにしました。
AIを用いた画像解析についての技術を持つ東京大学と共同研究を行い、風車のブレードに特化した画像解析AIを高度なレベルで、かつ、メンテナンスに役立つシステムとして構築します。